≪原稿≫
1.8050問題について
今年5月28日に神奈川県川崎市多摩区登戸で通り魔殺傷事件が発生し、被害者のうち2人が亡くなり、18人が負傷し、犯行の直後、加害者は自ら首を刺し、その後死亡しました。
またこの事件の後の6月1日、練馬区において自分の息子を刺し殺すという痛ましい事件が発生しました。
これらの事件の関係各位の皆様に対して哀悼の意を表します。
これらの事件においては、いわゆる8050問題が指摘されています。
ひきこもりが長期化し、親も高齢となり、収入や介護などに関して問題が発生することです。
80代の親と50代の子の親子関係での問題が多いことから「8050問題」と呼ばれております。
ひきこもりと犯罪率に相関は認められませんが、8050問題が要因として、大惨事が引き起こされている可能性は否めません。
また中野区自殺対策審議会において、8050問題が自殺につながっていくとの指摘をしており、ひきこもりが大きな問題となっています。
プライバシーの問題もあり、一個人や民間、第三者が入り込むことは容易ではありません。
現状を考えると行政・公共機関がやるしかないという結論になります。
8050問題といっても、ひきこもり、就業支援、生活保護、自殺対策など様々な行政の対応の形がありますが、当事者としてはどうすればいいか、わからないことだらけです。
そこで伺いますが、区はひきこもり問題、8050問題などに対して、どのように対応されているのでしょうか。もしくはしていくのでしょうか。
中野区社会福祉協議会は事業を進める中で、行政や介護保険等、既存のサービスの対象にならない「制度のはざま」にある人、またそれらサービスの対象になるにも関わらずサービスを利用しない、利用できない、いわゆるSOSを出せない人たちの存在が課題であると認識しています。
そこで社協は平成27年より、福祉何でも相談事業を開始し、年々利用者実績が増加しております。
福祉何でも相談で、ひきこもりの相談は年々増加し、特に40・50歳代の相談が多いということです。
相談内容に「中高年のひきこもり」が多かったことをきっかけに、平成27年に民生児童委員をはじめ、各すこやか福祉センターや地域包括支援センターなどに対してアンケート調査を実施し、「167名」の方が何らかの理由により、ひきこもり状態であることが分かりました。
社協としては8050問題について事業内容に盛り込んでおり、ひきこもりの当事者とご家族が語り合う居場所として「カタルーベの会」を毎月行っており、これも参加者が徐々に増加しております。
すこやか福祉センターなどから紹介で参加されることもあります。
これらの事業は社会福祉協議会の自主財源です。
今後、さらなる深刻化が予想されるこの問題に対して区は社会福祉協議会などとのより一層の連携・支援・役割分担が必要になると考えますが、どのようにお考えか伺います。
OECDによると、ひきこもりの原因の多くの精神疾患は児童青年期に発症するとのことです。
中野区は令和3年に児童相談所機能含む(仮称)総合子どもセンターを開所する予定ですが、その役割は重要です。
また私たち1970年代生まれの世代はロストジェネレーションともいわれ、バブル崩壊で就職が思うようにできなかった世代であり、ニート、ひきこもりの方々が多いともいわれております。
ひきこもりの潜在性は各世代にあります。
ひきこもり対策として、短期的観点からの対処療法と中長期的な観点からの根本療法、双方の環境を拡充していくべきと考えますが、区は今後どのような対策を講じていくのかお伺いいたします。
しかし、財源、人工、プライバシーの問題など行政対応には限りがありますが、最悪な事態にならない最低限度なセーフティネットとして、何ができるのかしっかりと熟考していただきたいと要望を申し上げ、この項の質問を終了させていただきます。
2.国家戦略特別区域法の活用について
自治体間競争の中、魅力ある自治体であるために中野区で特徴ある産業を育てたいと思っております。
自治体間競争とはいえ、他の自治体からヒト・モノ・カネを奪う発想はゼロサムゲームになるため、何もないところからモノ・カネを産み出し、選ばれる、正々堂々とした戦いを中野区にはしていきだきたいです。
私は再三、ご提案しておりますが、国家戦略特別区域法を活用して、規制緩和を行いイノベーション、そして新たなビジネスが始まる、そんなワクワクする区政を創っていきたいと切に願います。
今年3月に東京青年会議所中野区委員会から区長宛に提出した2つの提言について、取り上げます。
(1)世界最先端浸水予測システムについて
3年前から国土交通省国土技術政策総合研究所は、ゲリラ豪雨のような突発的な大雨にも対応可能な浸水予測システムを社会実装するため、中野区の一部地域で特定の方々を対象に社会実験を行ってきました。
このシステムは河川の外水だけではなく、下水道管の水の流れも考慮され、マンホールなどからの浸水、つまり内水においても予測されます。
また東京青年会議所では、その国交省のシステムと早稲田大学関根研究室のシステム、2つを活用した水防訓練を実施し、テレビ、新聞にも取り上げられ、その成果はマニュフェスト大賞の政策提言賞のノミネートをいただきました。
中野区地域防災計画の風水害対策計画では台風性豪雨・線状降水帯豪雨・ゲリラ豪雨の降水種別ごとの避難・対応が明記されたタイムラインが作成されました。
また東京都は今年度より、マイタイムラインという、水害時の個人の行動パターンをまとめるツールを作成しました。
リアルタイムの浸水予測システムとタイムラインを使うことで、防災関係者と住民のそれぞれの動き方が明確になっていきます。
様々な水害対策が進む中、国交省では今後も浸水予測システムのバージョンアップを図り、その実用性の検証をするため、中野区との連携を深めたいということですが、区のお考えをお伺いします。
しかし浸水予測システムが完成しても現行の気象業務法の解釈の仕方では、システムの不特定多数に情報発信ができません。
気象業務法では気象庁、気象予報士、予報業務許可事業者のみが気象情報・災害予測情報を出せるわけですが、基本的に気象予報士、事業者は気象庁の情報に則った情報しか発信しません。
今回の浸水予測システムのさらなる技術発展のサポートをすることを奇貨として、中野区のソフト対策としての防災力の強化が望めると考えます。
そこで、国家戦略特別区域法によって気象業務法の規制緩和をし、気象関連研究機関・事業者が予測技術を競争しあうことで、浸水予測システムを含む、新たな災害予測技術のイノベーションを推進をすべきと考えますが、区として、いかがお考えか伺います。
(2)ドローンについて
第一次はパソコン、第二次はインターネットやメールアドレス等、第3次はスマートフォンの登場でIT革命が興り、第4次はドローンによる「空の産業革命」と予測されています。
しかし法律によりドローンの飛行規制は厳しいです。
千葉県千葉市では国家戦略特別区域法を活用して、宅配ドローンの社会実験により実用性の検証中です。
東京青年会議所では、中野区においても同特区法に申請し、ドローンを利活用したシティプロモーション、防犯・防災、メンテナンス等の技術向上に資する実証実験を行い、イノベーションが創造できる環境づくりについて提言させていただきました。
区としても哲学堂公園のプロモーションビデオ撮影でドローンを使用されており、ドローン活用のお考えがあることはうかがい知れます。
私個人的には中野区内にあります都立富士高校のグランドをお借りまして、密集市街地におけるドローン飛行実験を2回実施、一回目はアメリカンフットボールの試合を真上から撮影し、戦略的に非常に参考になる映像を収め、二回目は富士高校では文化祭の後夜祭で打ち上げ花火を上げるため、その様子を上空から収めようとしましたが、風が強く、撮影を断念しました。
そこではドローンパイロットの技術やモラル、風の状況から飛行を止める判断力などを見て、あくまで安全安心は人間が作るものと確証しました。
ドローンによるイノベーションを創造するためには、まずは飛行できるフィールドを用意する必要があります。
以前にも取り上げましたが、有事も踏まえ、まずは河川上で飛行できないかと考えます。
河川は区管理のため、区の許可があれば、飛行可能と思いますが、飛行させるために必要な諸手続きについて伺います。
また小中学校の周年行事等で行われる人文字などはヘリコプターで撮影するよりもドローンの方が低価格であり、様々な角度の撮影が可能であり、有用と考えますが、こういった場合の諸手続きについて伺います。
ところで、国立研究開発法人建築研究所ではドローンを活用した建物点検調査技術の開発をしております。
建物の周りをドローンで写真のような画像データ、3Dレーザースキャン、赤外線など様々なセンサーで非破壊・非接触検査を行うことです。
高層ビルなどで人が直接検査するよりもドローンの方が安全です。
構造物の長寿命化する上で、維持管理は非常に重要で、そのためには定期的な検査・点検が必要です。
また有事の緊急性が高いときに有用な技術であります。
建築研究所は人口集中地区DIDである自治体と連携をして、社会実験を行いたいということです。
今後、技術発展が見込めるドローンに関しても国家戦略特区の申請などを踏まえ、建築研究所などとの連携を模索していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
河川構造物、道路などにも拡充できます。
「人よりもドローンの方が安全」というキャッチフレーズでイノベーションが興ることを期待して、この項の質問を終えます。
3.森林環境譲与税について
平成31年3月27日に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立しました。
森林環境税は令和6年度から個人住民税に上乗せして1人当たり1000円を徴収します。
徴収された森林環境税は森林環境譲与税として配分されます。
配分に関しては先行的に行われ、今年度から始まりました。
森林環境税は復興税からの切り替えとなり、実質負担を感じませんが、区民に収めていただいた森林環境税は、区民に還元されなければなりません。
そもそもこの森林環境税は国土の森林管理を推進するために平成18年の森林・林業基本計画、平成22年の木材利用促進法がこの法体系のルーツとなります。
私も現場で見学しましたが、国土交通省における実物スケールで行われた木造3階建て小学校の火災実験などを経て、平成26年には木造3階建学校・大規模施設などが建設できるように建築基準法が改訂されました。
そして森林環境譲与税ができました。
このような国の大きな動きの中から、国や東京都は木造の公共施設を建設するための補助制度を多く創設しておりますが、区は把握されているのか伺います。
これから区役所、小中学校などの建替えが進む中、財源が非常に厳しくなってきます。
森林環境譲与税と国・東京都の補助金を活用することで区の持ち出しを最小限に抑えつつ、小中学校の建替えであれば、山本議員が2年前の質疑で取り上げておりました木育にも資するものとなります。
木造を含む前提で計画をすることで多くのメリットが生まれてきます。
そこで森林環境譲与税をまずは環境基金に積み立て、施設整備に対して投資すべきと考えますが、区はどのよう活用するかを伺いして、この項の質問を終えます。
4.海洋プラスチックごみ問題について
海洋プラスチックごみ問題は人間生活から廃棄されるプラスチックごみが沿岸部や海に流出し、生態系破壊や人体への健康被害、沿岸部の経済社会へのダメージ等を引き起こしている問題です。
2018年6月、カナダで開催されたG7シャルルボワ・サミットでは海洋プラスチック問題等に対応するため世界各国に具体的な対策を促す「健康な海洋、海、レジリエントな沿岸地域社会のためのシャルルボワ・ブループリント」を採択しました。
プラゴミは、本日と明日、開催のG20の主要テーマのひとつとなっております。
プラスチックは紫外線に弱く、洗濯ばさみがボロボロになることが事例に挙げられます。
紫外線を受け続けたプラスチックは粉々になり、5㎜以下のマイクロプラスチックへと形を変え、生態系を破壊します。
洗顔料、歯磨き粉のスクラブ材等に利用されているマイクロビーズも同様です。
排出抑制よりもプラスチックを製造させない根本を絶つ政策が必要ですが、まずは可能なところから実施しなければなりません。
そこで伺いますが、区は家庭から排出されるプラスチックごみをどのように回収しているのか、お答え願います。
プラスチックのリサイクルは、物理的に形を変えるマテリアルリサイクル、化学反応をさせるケミカルリサイクル、プラスチックが原油由来ということで熱処理に使われるサーマルリサイクルがあります。
区としては収集したプラスチックごみをどのように処理しているのか伺います。
また中野区の家庭から排出されるプラスチックごみと、世界的に問題となっている「海洋プラスチックごみ」との関連性はどのように認識しているのか伺います。
中野区として海洋プラスチックごみ問題として、不作為はなくとも、個人のポイ捨てや、無許可業者の不法投棄など、モラル・法律にかかわるところもあります。
持続可能な世界を創るため、行政・そして各人でご努力していただくことを要望させていただいて、この項の質問を終えます。
5.中野駅新北口駅前エリア(区役所・サンプラザ地区)再整備について
本定例会、一般質問において新しいサンプラザにおける大規模集客交流施設は民設民営で行うとのご答弁について深堀させて頂きます。
区役所建設費用に254億円かかり、64億円を財政調整基金、190億円程度の起債が想定され、区債については早期に償還しなければ、年々利子返済分だけでも数億円かかり、サンプラザ再開発から生まれる転出補償は区政運営において非常に重要な財源となります。
サンプラザ再開発は民間によるものとなると、最終的には土地を所有する事業者に好き勝手な開発をされるのではとの懸念も出ます。
中野区・中野区民にとってはみんなが描く理想に近づけたい、事業者はできるだけ収益が高いものにしたい、双方の想いがあるでしょうが、権利としては事業者側の意見が通るのではないかと不安になります。
そこで伺いますが、区は民間によるサンプラザの再整備において、一定の発言権を維持し、事業者に好き勝手な開発をさせないための方法についてお教えください。
続いて、民設民営の大規模集客交流施設いわゆるアリーナについて伺います。
現段階において客席数の規模は決まっておりません。
3月の予算特別委員会で私は、現在の中野サンプラザホールがそもそも中野区民のために役立っているのか疑問を投げかけさせていただきました。
一般区民はコンサートなどに行かない限り、成人式しかサンプラザホールに入ることはありません。
いくら区民のための施設とうたっても、今と同規模のホールを作ると、区外の方ばかりで、区民に還元されることはありません。
ある適度の規模がある平土間型のアリーナであれば、北海道物産展みたいなイベント、最近では規模が拡大し細分化されているというコミケ、バスケ・卓球・フットサルなどのプロスポーツなども使え、区民がワクワクできる可能性が広がると指摘させていただきました。
むしろ区民に還元されない規模ならば、区がホールを間接的であろうと立地させる必要があるのでしょうか。
ということで最大の集客規模の平土間型の施設がよいということで提案をさせて頂きます。
第22期の4年間で自民党会派、委員会行政視察において、函館アリーナ、ゼビオアリーナ仙台、浜松アリーナ、大阪城ホール、愛媛県武道館、マリンメッセ福岡などの全国のアリーナ施設に伺い、その成功と失敗を視察してきました。
設計思想を最先端にすることで、一回当たりの興業の使用料、年間の維持管理費の抑制などが図れます。
ポイントは大きく分けて4つ。
(1)舞台装置・照明:地上からの組み立て式ではなく、ワイヤーでの吊り下げ式で設計すべきです。
例えば大阪ホールでは最大39トン吊るせる仕様としましたが、増築であったために定期的なメンテナンス費が高いということです。
LED照明は軽量化が図れ、現在においては素晴らしい演出ができます。
(2)搬入:興業の装置の荷捌きのため、トラックがアリーナに直接入れれば、人件費抑制、トラックをアリーナにトラック駐車場を確保する必要はありません。
これはホールではできません。
(3)ウェイティングスペース:興業開始前の利用者の待機スペースですが、四季の森公園、いくらでも時間を費やしたくなる中野駅周辺地区があり、地域に還元されます。
(4)IoT活用:スマホなどで管理される出入口でまたこれも人件費の抑制ができ、入場もスムーズにいくわけであります。スマートアリーナといわれるものです。
区民が楽しめる施設とするために平土間型施設、つまりアリーナにしていただきたいと考えます。
この新しいサンプラザにおけるアリーナの在り方について、区長はどのようにお考えなのかお伺いして、私のすべての質問を終えます。