ゲリラ豪雨を迎え撃て!!世界初の技術を使った水防訓練

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表題名のイベントを公益社団法人東京青年会議所中野区委員会(委員長:加藤拓磨 以下、委員会)主催し、その事業内容が第13回マニフェスト大賞政策提言賞ノミネートに至ったため、その内容に触れられたい。

http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/docs/2018100100016/

北川正恭早稲田大学マニュフェスト研究所顧問(中央)と公益社団法人東京青年会議所中野区委員会メンバー

日本は科学技術関連に3兆円以上の国家予算を費やし、世界をリードする科学技術開発を進めるが、一部の技術は社会に浸透する機会がなく廃れていくことがある。浸透しない理由のひとつとして、その科学技術の利点をうまく情報発信できず、各分野の専門家の技術の“シーズ”と、社会の課題解決の“ニーズ”がマッチングする機会に恵まれないことが挙げられる。シーズとニーズ双方の仲人、ファシリテーターの存在が必要である。例えば、当初スマートフォンという技術シーズは、誰にも有用性が理解されず、故スティーブ・ジョブズ氏がファシリテーターとして、シーズとニーズと結び付け、爆発的なイノベーションを引き起こした。

委員会はその役割をイノベーションマネージャーとして、既存で社会に浸透されていない技術シーズと社会ニーズをマッチングさせ、イノベーション創造を推進することを目的に本事業を実施している。

関係者で集まるスキームはこれまでも多くあったが、全体の調整を行うイノベーションマネージャーが必要であるとの仮説のもと事業を展開していった。

そして本事業においては昨今の大規模水害などから水防災力向上は社会ニーズとなり、国交省・早稲田大学は東京23区を対象とした世界初の浸水予測システムという技術シーズを持っているが、互いの接点がないためにマッチングするための社会実験を催した。

上図を社会実験に合わせたプレイヤーにすると下図となる。

【社会実験】

委員会では2018年7月15日に中野区立南中野中学校にて「ゲリラ豪雨を迎え撃て!!世界初の技術を使った水防訓練」を開催し、水害が心配される神田川周辺地域の方々に最先端の浸水予測システムの概要説明とそれを使った水防訓練を実施し、システムの有用性を確認していただいた。

 

 

アンケート調査でシステムが必要であるとの回答が100%となり、システムについての要望も寄せられ、ニーズとシーズが合わさり、イノベーションの兆しが生まれてきた。この水防訓練はTBS、朝日新聞にも取り上げられ、社会の関心の高さが窺い知れた。

【政策提言】

社会実験の結果を踏まえ、東京都へ対して浸水予測システムの整備環境をつくることを提言させていただく。現在、当委員会・国土交通省・東京都で提言に向けて調整中であり、提言書を提出する予定である。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催時期はゲリラ豪雨が発生しやすい時期であり、早急に浸水システム構築を行うべきとの提言をする。

 

【今後の展望】

提言通りにシステム構築の導入が推進されれば、23区全域でシミュレーションを使った水防訓練を行える。これまで地震が中心である避難訓練に水防メニューを加えられる。

また気象業務法では気象庁官(気象庁)・気象予報士以外からの気象予報を禁じており、つまり国交省であろうと浸水予測システムの予報情報を不特定多数に出すことができない(連絡先がわかれば、その限りではない)。そこで中野区へ、内閣府に国家戦略特区を用いた気象業務法改定を申請することを提言し、気象・防災に関するイノベーションを起こせる環境を区内に創造する。

 

 

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<補足説明>

【経緯】

2014年、国土交通省国土技術政策総合研究所は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の対象課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」におけるゲリラ豪雨対策として、浸水予測システムの開発を始めた。システム検証の対象地域を中野区として、2017年から限られたユーザー対し、リアルタイム浸水予測情報を配信する社会実験を開始した。中野区としても予算の持ち出しなく、防災力向上が望めるため協力したが、期間中に豪雨がなかったために有効な検証結果が得られなかった。そこで実際の雨ではなく、仮想の豪雨を想定した浸水予測シミュレーション結果を使って避難訓練することで浸水予測システムの有効性を検証できると仮定し、国土交通省と当委員会で本事業を開催することとした。

【事業実施のマネジメント】

事業を進めるにあたり、多くのステークホルダーがおり、イノベーションマネージャーとして様々な調整が必要であった。

<大学・研究所>

同様なシステムを開発している早稲田大学関根正人教授に国交省の浸水予測システムでは精度が不十分であり、社会実験にそのまま進むことは許可できないと指摘された。結果的には国交省と早稲田大学のそれぞれの長所と短所を整理し、双方のシステムを検証することとし、技術シーズの拡充を図った。

<地元住人・ボランティア>

大前提として社会ニーズが高まらなければならない。事業とその先について展望を町会・ボランティアに理解していただき、本事業の開催告知を手伝っていただき、当日も参加していただいた。

<行政>

(今後の展開)浸水予測システムで予報をするには、現行の気象業務法では不可能なため、国家戦略特区等で法律の規制緩和に関する調整を行っていく必要がある。

<民間企業>

遠い将来には民間企業が利益を上げられる技術にならなければ、最終的にイノベーションが起こらないため、防災情報を頒布する事業が持つ新規性・魅力・ビジネスチャンスの可能性を民間企業に伝え、資金サポート、技術サポートをしていただいた。

<その他>

東京2020オリンピック・パラリンピックまでのシステム構築を目指していることから、中野区平成30年度「東京オリンピック・パラリンピック気運醸成事業のための助成」を受け、東京2020組織委員会「東京2020応援プログラム」の認証を得た。

またSIPの主幹省庁である内閣府と国交省と相談し、国交省の記者クラブに投げ込みをしていただき、テレビ・新聞のマスメディアの取材を受け、事業のアピールとなった。

 

ちなみに優秀賞のプレゼンを拝見させていただいたが、非常にシンプルなものであった。もっと噛み砕いて申請をすべきとの反省である。